仙台高等裁判所 昭和27年(う)764号 判決
憲法第四十一条は国会が唯一の立法機関であることを宣言しており又その第二十九条は国民の財産権の内容は法律で定めることを明記している。更に憲法第七十三条第六号において内閣が行う事務として政令の制定を挙げているが、この政令には特に法律の委任がある場合を除いては罰則を設けることができない旨を定めていることは国民の財産権については法律に基く政令によつて何等かの制限を設け、その制度に違反した者に対して罰則を課すことはできるわけであり憲法第四十一条及び第二十九条が委任命令を一切排除するものと解すべきではない。しかも新憲法下に新に制定された内閣法及び国家行政組織法においても法律に基く政令又は省令によつて国民の権利を制限し又は義務を課することを承諾していることに鑑みれば食糧管理法第九条の委任命令も亦合憲であると解される。従つて同法により主要食糧の配給、加工、製造、譲渡又は移動若しくは価格その他同法で特に限定した事項に関し必要な命令を為し個人の行動の自由を一般的に制限又は禁止することを得るものとし同法第三十一条において、これが統制命令に違反した者を処罰することを定めたものであるから食糧管理法は何等憲法に違反するものではない。また食糧管理法は国民食糧の確保及び国民経済の安定を図るため、食糧を管理し需給及び価格の調整並びに配給の統制を行うことを目的とし、その目的を達成するに必要な手段、方法、機構及び組織を定めたものであるから生産者の供出後の自家消費のためにする主要食糧の譲渡であつても法定の除外事由がない限り、これを処罰すべきものであること言を俟たないところである、この点から考えると同法は国民全般の福祉のため能う限りその生活条件を安定せしめるための法律であつて、まさに憲法第二十五条の趣旨に適合する立法であるといわなければならない。されば同法を捉えて違憲無効であるとする論旨は誤りであつて採用することはできない。